Columns|コラムシリーズ7【自分で事業を立ち上げたい人へ】全9回
第5回 個人事業か法人格か
前回は「資金」についてお話しました。
今回は「個人事業か法人格」かについてお話します。
最初に私個人の話をしますと、正直個人事業という選択についてはあまり考えませんでした。
法人格ありき、でやるなら株式会社で、と。
なので立ち上げの際に「個人事業主」の場合や「合同会社」の場合と種々比較して決めたわけではありません。
そういう意味で体験に基づいたお話でないことご了承ください。
ではなぜ私が「法人格」で「株式会社」を選択したかについてお話します。
一言で言えば「株式会社を作りたかった」ですが、
自分の中では、将来提供するサービスが受け入れられて結果的に規模が大きくなってきた時に株式会社という姿が似つかわしい、
というイメージを持っていたからです。
本来は利便性や経費面なども含めた一長一短を比較し、
自分の事業の姿と照らし合わせて判断するプロセスが必要なのでしょうが(^^)
まず「個人事業主」と「法人格」の主な違いからお話します。
「法人格」から見た視点でいうと、
・ メリット:信用度が高い。資金調達手段が拡がる。節税手段が多い。
・ デメリット:設立の手続・費用負担がある。法人住民税がある。会社としての業務負担がある。
でしょうか。
「個人事業主」の視点からみたら、メリット・デメリットは逆になります。
信用度について、ですが、もちろん事業の性格からこれが当てはまらないこともありえますが、
一般的に自分が取引をする際、同じ無名であればどちらに信用をおきますか。
同じ法人格でも無名のブランドと有名なブランドでは、どちらを信用しますか。
個人差はあると思いますが、無名より有名、個人よりは法人の方が信用度は高い傾向にあります。
サービスの提供と対価の取引が事業の根幹です。
そこには「良いサービスだろう」という信用をもってもらえるからこそ成立する取引でもあります。
「信用」というのは事業にとってなくてはならないものです。
不特定多数の顧客を対象とする場合、法人格の方が信用は得やすいですが、
特定の個人客を対象とする場合はその限りではないですね。
資金調達手段、ですが、個人の場合は一般的には自己資金か借入に限定されてしまいます。
法人格特に株式会社であれば、株の発行による資金調達が可能です。
加えて将来の株式への転換を前提とした転換社債という手段も可能になります。
ただこれも、後ろに資産家のパトロンがいる場合はその限りではないですね。
節税手段、ですが勿論個人事業主でも節税手段はいろいろあります。
不動産投資のように現状の主たる収入に近い規模の収益がある場合、
青色申告がありますのでそれでも大きな節税ですね。
ただ法人化した場合は公私別の原則で、経費として扱える視点がいろいろあります。
これも事業の性格によってその拡がりに差があったり、なかったりします。
設立の手続・費用は前回のコラムでも触れましたが、
定款作って法人登記する登記税がかかりますので100,000円〜200,000円弱の費用が法人では必要です。
この金額が無視できない場合は検討すべき事項の一つです。
たとえば最初は資金がないので個人事業主として事業を開始し、
収益がたまって貯金が増えた所で法人化する、というステップもあります。
むしろ初期費用が少ない人にとって見ればとても現実的なステップだと思います。
法人住民税について。
これは法人を設立すると黒字だろうが赤字だろうが毎年70,000円を法人住民税として収める義務が発生することです。
そして最後は会社としての業務負担。
例えば株式会社になれば必ず年度末で決算をして財務諸表を作成します。
また役員報酬などを変更する場合は決算月から3ヶ月以内に株主総会を開き審議しなければなりません。
財務諸表は契約した税理士さんにまとめてもらうにしても、
日々の資産の動きについては自分が管理する必要があります。
それも会社としての業務負担です。
社員がいれば労務環境を整備しなくてはなりません。
厚生年金、退職金、福利厚生、保険、こういったことも社員に対し提供する責務があります。
複数人いる場合はその時点で、総務、人事といった業務が自然と発生します。
個人事業主では人事は基本ありません。
総務は多少あるでしょうが法人ほどではないです。
以上主な項目についてお話してきました。
もし1人で小さな事業を始めようと思っている方がいらっしゃいましたら、
「個人事業主」からスタートして資金をためてから「法人」を設立するというステップが最も堅実で、
少ない資金を有効に使える方法かと思います。
もちろん事業の性格上「法人格」が必要、ということであれば
「合同会社」または「株式会社」という形で法人格を立ち上げてもいいと思います。
簡単なイメージからすると株式会社より合同会社の方が簡易的です。
登記税も株式会社が150,000円に対し、合同会社は60,000円なので安い点は魅力です。
自分の事業とその将来のイメージを考え、自分にあったスタイルを見つけてください。
次回は「開業の手続」についてお話します。