Columns|コラムシリーズ7【自分で事業を立ち上げたい人へ】全9回
第2回 まず動機
前回は「自分で起業すること」とは「会社勤め」とどう違うのかを、
私の体験を通じてお話させていただきました。
今回からは「ではどうやったら起業できるのか」
というステップについてお話したいと思います。
「どうやったら起業できるのか」という問いかけに対する最初の答えは、
「なぜ起業したいのか」という「動機を持つこと」です。
しかもこの動機が自分の根源的な欲求から生まれているかどうか、
がとても大切だと私は思っています。
なぜ「動機」が大切なのでしょう。
事業をやっていくといいことも悪いこともあります。
時には事業を続けるべきかという判断に迫られることがあります。
そういうときに拠り所になるのが「動機」です。
そもそもなぜ自分はこの事業をやっているのか
そこに帰着するのです。
その問いかけの答えが「動機」です。
動機がしっかりしていればいるほど、自分の支えになります。
逆にふわふわしていればいるほど、支えとして機能しません。
辛い時に簡単に事業をやめてしまうことになりかねません。
やめること自体は悪いと言い切ることはできません。
時には撤退の判断も必要です。
しかし、事業は「継続」してこそ「やる意味」があります。
本当に撤退せざるをえない状況の前にいくつもの壁にぶちあたります。
そんなときに簡単に「つらいからや〜めた」としたら、
今後何をやっても継続できません。
ぐっと踏みとどまってぶち当たった壁を乗り越える努力をすることで、
事業は継続できます。
私はシェアハウスの管理運営をしています。
なぜこの仕事をしているのでしょうか。
・ コミュニティーを育み楽しい生活を提供することができる
・ 家賃収入として不労所得的な性格の収益が得られる
・ 比較的自分の時間の融通がきく
といった直接的な理由をあげることができますが、その根源にあったのは
・ 人の役に立ちたい
・ 両親に何かあったら自分が動けるようにしたい
といった欲求です。
大手企業に勤め、技術系から管理職、事業責任者、海外赴任、リストラ、
そして退職など様々な経験をしてきたこと、
結婚、養育、離婚といった決して順調でなかった私生活など、
自分の体験を何かしらの役に立てたい、という欲求。
これまで世話になった両親に対して、最後は自分が孝行したいという欲求。
睡眠とか食欲とかいろいろな欲求はもちろんありますが、
「自分にとって外せない欲求」ってなんだろうと自問自答してみたところ、
絞り出てきたのがこの2つだったのです。
今でもこの欲求には変わりはなく、事業の根幹として私の心の支えとなっています。
いまでこそ3棟のシェアハウスがほぼ満室で稼働しておりますが、
起業して4ヶ月は全く収入がなく、シェアハウスの運営を開始するまで1年を要しました。
運営を始めたのはいいですが、最初の半年の稼働率は平均で40%程度しかなく、
物件を預けていただいているオーナー様からは苦言を頂戴していました。
私はコンセプト型のシェアハウスを運営することを選びました。
シェアハウスの環境をいい雰囲気に保つためには、
入居者同士の理解・協力が不可欠です。
コンセプトがあると、
入居者の方々がそのコンセプトを軸に交流を育んでいただけることが期待できます。
従って問合せの段階でまず趣旨をご説明し、
コンセプトに合うかどうかお尋ねしております。
コンセプトにご賛同いただいたとしても、必ず面接をさせていただき、
コンセプトに合わなそうな人はお断りをしておりました。
しかし稼働率が低い状態が続きオーナー様から苦言を言われる状況におかれると、
ふと問合せがきたら全部受け入れようと思ったこともありました。
そのときに「そもそもなんでこの事業をやってるんだ」と立ち返ってみたのです。
自分が役に立てるような環境を作るには、
やはりコンセプトははずせない、と思い直すことができました。
もちろん、他に打てる手立てを実施していきました。
その結果、素敵な仲間に入居してもらい3ヶ月後には満室になりました。
また私は1棟あたり10〜20室の物件を中心に選んでいます。
収益効率を考えると部屋数は多ければ多いほど有利です。
収益を優先すれば大型の物件を選びに行く必要がありますが、
10〜20室くらいが私にはコミュニティー形成にはちょうどいい規模なんです。
なのであえてこのくらいの規模の物件にこだわっています。
このように動機があるから、辛い時も軸をぶらさず、
またその後の事業方針を明確に設定することができます。
いかに大切なものか、ちょっとでもおわかりいただけるとうれしいです。
次回は「どんな事業を展開するか設計する」というステップについてお話します。