Columns|コラムシリーズ7【自分で事業を立ち上げたい人へ】全9回

第3回 どんな事業にするか設計してみよう

 前回は「動機」の大切さについてお話させていただきました。


 事業を始める動機が揃ったらいよいよ

「どんな事業をどのように」行うのか、設計します。

これがいわゆる事業計画の元になります。端的にいうと

・ どんなサービスを

・ 誰に対して

・ どのくらいの価格で

・ どのように提供するのか

を具体的にすることです。


1. サービスの内容

 事業=対価をうけるに値するサービスを提供すること

と言い直すことができます。

この「対価をうけるに値するサービス」のことです。

大事な視点は「自分らしさ」と「顧客にベネフィット(利益)をもたらすかどうか」だと思います。

 私の場合は「シェアハウスの管理運営」というサービスの提供をしたいと思いました

(なぜ「シャアハウスの管理運営」かはコラム「なぜMBAシェアハウス®を始めたのか」をご参照ください)。

「シェアハウスの管理運営」をしている業者は法人・個人含めたくさんいます。

シェアハウス専門のポータルサイトでも一見だけでは見きれないくらいの物件がありますので、

何かしらの特徴が必要でした。

 ここで私が辿り着いた「自分らしさ」は、「これまでの自分の体験」でした。

中学受験、私学男子校中高一貫教育、野球部活動、浪人、大学、音楽、就職、バブル、結婚、育児、離婚、

大企業での技術者・製造・管理職・海外赴任・退職、MBA、起業などなど。

一つ一つの事象は多くの人が経験しているのですが、

これらをセットにすると全てに当てはまる体験をした人はぐっと少なくなります。

少なくとも私の周りにはいませんでした。

 セットにすることの意味はそれぞれの要素の組み合わせによる

体験、知見という新しい世界が生まれることです。

私はこの「自分の体験」を役に立てたい、という思いに至りました。

 さてそれが「顧客にベネフィット(利益)をもたらすかどうか」です。

シェアハウスでは、いろいろな人達が一つのコミュニティーに入ることで、

相互関係が生まれ唯一無二の体験・知見を生み出します。

シェアハウス自体が「顧客にベネフィット(利益)をもたらす」サービスであるといえます。

加えて少なくとも私が持っていて顧客がもっていない体験、知見はあるはずなので、

私から新しい体験・知見を提供できると思いました。

2. 対象となる顧客

 1.で決めたサービスを提供する相手です。

どんな事業にもメインとなる顧客が存在します。

相手を具体的に絞り込むことで、サービス内容もより具体的かつ特徴的になります。

 私の場合、前提として社会人を対象にしたいと思いました。

これは自活できていることや、協調性がある程度育まれている確率が高いことで、

顧客とのコミュニケーションをスムーズにスタートしたい、という思いからです。

経験のない私にとって不安要素は出来る限り排除したいという気持ちでした。

その上で私の体験・知見を得て喜んでもらえる人をイメージしてみました。

 一つは私と同じようにビジネススクールに通っている社会人学生。

自分、環境、会社など対象は様々ですが、

現状よりステップアップしたいという気持ちが強い人達の集まりであることを、

ビジネススクールに通ってみて感じました。

そういう人たちは自分に持っていないもの、

新しいことに対して貪欲に吸収したいという気持ちを強くもっています。

実際に通学時代に相談を受けることが多々ありました。

1棟目のMBAシェアハウス®のターゲット顧客は「ビジネススクールに通う社会人学生」

または「それに準じる意識をもった社会人」として設定しました。

 その後コンセプトシェアハウスを設計するにあたり、

「そのコンセプトに関心があり」「一緒に住む意義がある」と思われる顧客層を考えるようになりました。

 ニーズに応える事業、というスタンスの場合、

世の中でどういうことが求められているのか、

を問うマーケティング的検証を通じて対象顧客を絞り込むアプローチが一般的です。

でも私の場合は「自分がやりたいシェアハウス」から入っているので、

そのコンセプトを楽しんでもらえる客層は、というアプローチになります。

自分の目指したい事業の内容でどちらのアプローチも、アリ、です(^^)

3. 価格

 良いサービスでも高すぎては顧客に受け入れられません。

一方安すぎては事業になりません。

なので価格を決めることは慎重にならざるを得ません。

価格を決める際に一番参考になるのは「同業者による値付け」です。

いわゆる「相場」です。

 お客様はお客様なりに「割安」とか「割高」と感じるときには、かならず比較対象があります。

野菜を買うときに別のスーパーと比較したり、今なら価格比較をするサイトが随所に見られますので、

同商品をネットショップごとに比較したり。

少なくとも「割高」と思われるとお客様は選択してくれません。

 これは絶対額が高いか低いか、の違いでないことに注意が必要です。

車を買うにしてもお客様によっては中古で数万円の2000ccセダンで十分、という人もいれば、

数百万円もする外車でも「割安」と感じる人はいます。

中古の2000ccのセダンと数百万円する外車では当然スペックは違ってきます。

同じサービスの範疇での比較でこそ意味があります。

 私はこの価格で苦い経験をしています。

近隣のシェアハウス賃料相場を調査し、

コンセプトを乗せているから賃料を上乗せできると期待して価格付けをしました。

その結果中々入居が決まらなかったのです。

理由の一つが「賃料が高い」でした。

私が提供するコンセプトは実際に体験していただかないと中々実感することが難しいものです。

何も実績がないところでこちらが大上段に「コンセプトがあるから」といってプラスアルファの価格付けをしたことは、

顧客目線を無視した傲慢な姿勢でした。

 しばらくしてオーナー様にご相談し価格改訂をすることで、

入居を決めていただく方が増え2ヶ月後くらいには満室が確定しました。

いい経験をしました。

 「一度価格を下げるとあげられない」という声を耳にします。

確かに「値上げ」はお客様に受け入れていただくのは至難の業です。

一度「安い」価格を手にしたお客様はその既得権益を手放すことに抵抗を示すのはとても当たり前のことです。

一方で価格は需要と供給のバランスで成立するものです。

なのでやり方によっては価格を上げることは十分可能だと考えています。

大事なのは自分の一方的なやり方にならないことです。

常にお客様と向き合う姿勢を忘れないことが大切だと思います。

4. 提供方法

「サービスの内容」「対象顧客」「価格」が決まりました。

さあ次はどこでどういう方法でこのサービスをお届けするか、です。

この「サービスを届ける」には大きく2つの面があります。

「お客様に認知してもらうこと」と「具体的にサービスを届けること」です。

 まず「認知」してもらうこと。

どんなに良いサービスでも知ってもらわないことには取引につながりません。

そのためには広告が必要です。広告にもいろいろあります。

テレビコマーシャル、電車内のちらし、お店の前で配るちらし、WEB、SNSなどなど。

広告にはコストがかかります。

自分の事業と照らし合わせてどれくらいコストを掛けられるかを見積もっておく必要があります。

 いくら効果が大きいからと言っていきなりテレビコマーシャルで1千万円かけるなんてできませんよね(^^)

 今はSNSの発達であまりお金をかけずに広告を打つ手段がでてきました。

同業者がどのような手段をとっているかをまず参考にして

試行錯誤しながら自分にあった宣伝広告の手段を見つけられるといいと思います。

 私はシェアハウス専門のポータルサイトへの掲載とFacebookによる宣伝が中心です。

それと直接的ではないのですが、ホームページを通じてコラムを発信したり、

ブログを更新したりして私のスタンスの発信をしています。

これはコンセプトシェアハウスには「共感」という要素がとても重要だと思っているので、

まずは私から「こういう者が運営しています」という開示をしたほうがより理解していただけるかな、という思いです。

 そして次に「サービスをどう届けるか」です。

これもコストを強く意識することになります。

物販であれば物流コスト、対面あるいは直接サービスであれば交通費、

WEBによるマッチングであれば登録料やメンテナンス費用といったコストがかかります。

 私の場合住人の方々と一緒に作り上げていくものなので、

住人の方々にいつでもご連絡できるような連絡網が大切な要素の一つとなっています。

できるだけ余裕を持った日程にするとか、

普段から連絡網が機能するようにメンテナンスするといったことを意識しています。

5. 余談

 私が学んだ経営学ではよく「STP」とか「4P」といったマーケティングの基本概念で表現されることが多いです。

これらは考察する上でとても便利な視点であり切り口なので、余裕のある方はちょっと調べてみるといいでしょう。



次回は「資金ぐり」についてです。



「第2回 まず動機」

「第4回 資金は大丈夫か」

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