Columns|コラムシリーズ8【事業計画の初歩の初歩】全7回
第6回 キャッシュフロー
前回までP/L(損益計算書)を構成する
「売上」「経費(変動費)」「経費(固定費)」についてお話してきました。
今回はC/F(キャッシュフロー)です。
C/F(キャッシュフロー)ってなんでしょう。
「資金の流れ」まさにその通りです。
事業をするにあたって資金は不可欠なツールです。
「クレジットカードで買って銀行から自動で引き落とされるからお金触ってないよ」
なんて言う人がいるかもしれません。
でも銀行の口座にはお金があることが前提となっています。
もし口座にお金がなかったら、引き落としができず債務不履行となりクレジット会社から請求がきます。
ペナルティ付で。悪質と判断されたら二度とクレジットカードが作れなくなるもしれません。
信用がない、と烙印を押されるからです。
そう「信用」です。
事業の多くは「信用」の上に成り立っています。
「この人はお金を払ってくれるだろう」
「この人は物を届けてくれるだろう」
だから「物々交換」でなく「貨幣」を使った取引が成立しています。
クレジットにいたっては後日口座から引き落とされますから、
「引き落としまで口座に必要な金額が入金されている」という
「信用」を元に取引が成立しているのです。
もし必要な時に支払うお金がなかったら・・・
受け取る側は怒ります。
そしてあなたに対する信用を失います。
信用を失ったらどうなるか。
取引ができないのです。
取引ができないということは事業が成立しません。
すなわち倒産です。
事業をやる上で資金がなくなるということは、会社の消滅を意味します。
TVドラマなどで、小さな工場の工場長が銀行員に対して
「融資をお願いします」と頭を下げるシーンがでてくるのを見たことがある人は多いと思います。
ドラマを見ている側は他人事として見ていますが、
工場長の立場からすると、この工場が存続するかどうかの瀬戸際で真剣そのものです。
工場には資金がなく、
融資によって銀行からお金が口座に振り込まれないと、
材料の支払いができない、
給料が払えない、
といった事態に陥りあっという間に倒産してしまうのです。
なので「資金は尽きてはいけない」のです。
それを管理する手法がC/F(キャッシュフロー)です。
子供の頃につけた小遣い帳と基本的には同じです。
お小遣いをもらい(収入)お菓子や文具を買うこと(支払い)で残高がでてきます。
この残高が0を下回らないようにします。
特別な知識はいりません。
先にも述べた小遣い帳を毎日つけるような感覚でお金の出入りを管理します。
仕入れのタイミングと売上が回収されるタイミングが大切です。
例えばこれまで上げてきた例でみてみましょう。
この時口座には100,000円あったとします。
◯月1日 残高100,000円
◯月2日 商品の仕入れ5,000円x10個=50,000円 支払い 残高50,000円
◯月2日 包装紙購入500円x20個=10,000円 支払い 残高40,000円
◯月4日 商品の発送1,000円x10個=10,000円 支払い 残高30,000円
◯月5日 商品売上10,000円x10個=100,000円
ここで、売上の入金が即日あった場合、
100,000円の入金があり口座残高は130,000円となります。
10日後にまた仕入れを10個しても、残高があるので支払いができます。
◯月15日 商品の仕入れ5,000円x10個=50,000円 支払い 残高80,000円
◯月15日 包装紙購入500円x20個=10,000円 支払い 残高70,000円
◯月17日 商品の発送1,000円x10個=10,000円 支払い 残高60,000円
◯月18日 商品売上10,000円x10個=100,000円 入金 残高160,000円
安心ですね。
ところが売上金の回収が月末だったらどうなるでしょうか。
◯月1日 残高100,000円
◯月2日 商品の仕入れ5,000円x10個=50,000円 支払い 残高50,000円
◯月2日 包装紙購入500円x20個=10,000円 支払い 残高40,000円
◯月4日 商品の発送1,000円x10個=10,000円 支払い 残高30,000円
◯月5日 商品売上10,000円x10個=100,000円 入金なし 残高30,000円
ここで15日に予定していた仕入れができなくなることがわかるでしょうか。
従ってこの場合は1日時点の残高をもっと持っておく必要があります。
200,000円あったとしましょう。すると、
◯月1日 残高200,000円
◯月2日 商品の仕入れ5,000円x10個=50,000円 支払い 残高150,000円
◯月2日 包装紙購入500円x20個=10,000円 支払い 残高140,000円
◯月4日 商品の発送1,000円x10個=10,000円 支払い 残高130,000円
◯月5日 商品売上10,000円x10個=100,000円 入金なし 残高130,000円
◯月15日 商品の仕入れ5,000円x10個=50,000円 支払い 残高80,000円
◯月15日 包装紙購入500円x20個=10,000円 支払い 残高70,000円
◯月17日 商品の発送1,000円x10個=10,000円 支払い 残高60,000円
◯月18日 商品売上10,000円x10個=100,000円 入金なし 残高 60,000円
◯月30日 売上金回収100,000円x2=200,000円 入金 残高260,000円
翌月は残高260,000円で事業をすることができます。
売上の回収時期、支払いのタイミングによって
最初に用意しておかなければならない資金に違いがあることがおわかりいただけたかと思います。
前回示したように事業当初は赤字であることはよくあることです。
赤字になるということは資金が流出していることでもあります。
しばらく赤字でも耐えられるような資金を調達しておく、
これがC/F(キャッシュフロー)による計画のアウトプットでもあります。
シェアハウス管理運営の場合、
集約すれば人件費が一番大きく当面の人件費を賄うだけの資金を用意する必要がある、
という計画を策定しました。
場合によっては物件を購入したり、必要な家財道具を調達したり、
イベントをしかけたりということで資金を必要とするような計画もあります。
そのための資金をどこから調達することができるか、
これも事業計画の大事な要素ですが、
銀行や投資家からいきなり多額の資金を調達するというステージは
ここでは想定していないので、今回のコラムでは割愛します。
次回は最終回「計画にしばられるな」です。