Columns|コラムシリーズ8【事業計画の初歩の初歩】全7回
第5回 経費(固定費)
前回は「売上—経費(変動費)—経費(固定費)=営業利益」でいうところの
「経費(変動費)」についてお話しました。
今回はこの中で「経費(固定費)」についてお話します。
「経費(変動費)」が物・サービスを提供するごとにかかる経費だったのに対し、
「経費(固定費)」は物・サービスの提供量とは無関係にかかる経費のことをいいます。
・ 人件費:自分含めた給料
・ 家賃:事務所を借りたりする場合月極など定期的に一定額を支払います
・ 広告宣伝費:広告料は販売数量とは基本関係がないですね。
その他にも会議費、通信費、旅費交通費、新聞図書費、
外注費、販売促進費、研修費といった
色々取引には直接関係のない経費がかかります。
前回触れた「粗利」。
粗利の合計でこの「経費(固定費)」をまかなうことになります。
賄えられれば黒字、まかなえなければ赤字です(^^)
前回も使った事例で考えてみましょう。
「経費(変動費)」が6,500円で
販売価格が10,000円の商品を月に20個販売する計画です。
すると1個あたりの粗利は3,500円ですから、
3,500円x20個=70,000円の粗利が得られます。
すなわち70,000円以内で他の費用を抑える必要があります。
「え〜給料100,000円ほしい」といってもこの計画ではもらえません。
さあ、どうしましょう。
簡単にするために自分の給料以外に他の費用はかからない、としましょう。
100,000円の給料をもらうためには
100,000円 ÷ 3,500円 =28.6個
すなわち月平均29個は販売しないといけない、ということになります。
ここで再び「売上」の計画に戻ります。
さあ、29個毎月販売するためには何をしなきゃいけないのだろう。
もう一つの例で「経費(変動費)」が小さかったサービスを取り上げてみましょう。
提供サービスは10,000円。経費(変動費)は600円でした。
従って
9,400円x20件=188,000円が粗利の合計になります。
給料が100,000円欲しい、といったらこの場合は捻出できそうですね。
このように、経費(変動費)が大きい商品・サービスの取引の場合は、
経費(固定費)を捻出するために多くの量を販売する必要があります。
薄利多売という言葉はこういうところから生まれています。
逆にこの粗利の合計を意識することが、
自分が投じることができる経費(固定費)を決めることになります。
いくらすばらしいからといって、
この粗利率の高いサービス事業でも
月に200,000円もするような事務所を借りてしまっては、赤字になってしまいます。
最初は自宅をオフィス代わりに使おう、とか
月に10,000円くらいで利用できるコワーキングスペースを使おう、とか
オフィスが必要ならその事業に見合った場所というものが見えてきます。
これが経費(固定費)を考える大きな意味でもあります。
鶏と卵のような話ですが、
「経費をかけないと売上があがらない」
「売上をあげないと経費をかけられない」
ということが堂々巡りになることがあります。
そういうときは、かけた経費でどれくらいまで売上があげられるか、をまず算出してみましょう。
たとえば、先のサービスの例でいうと粗利は1つあたり9,400円です。
1人で20個までサービスを提供できるとします。
1人の給料は100,000円、事務所家賃も100,000円だったとします。
1人でやった場合、
売上:10,000円x20個=200,000円
—) 経費(変動費):600円x20個=12,000円
—) 経費(固定費:人件費):100,000円
—) 経費(固定費:事務所):100,000円
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利益 ▲12,000円
そう赤字ですね。ではもう1人増やしてみましょう。
給料100,000円、1人で20個までサービスを提供できるという条件はかえていません。
売上:10,000円x20個x2人分=400,000円
—) 経費(変動費):600円x20個x2人分=24,000円
—) 経費(固定費:人件費):100,000円x2人分=200,000円
—) 経費(固定費:事務所):100,000円
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利益 +76,000円
となって黒字になりました。
必要な経費を充当するために、1人メンバーを追加するという前提を作ったのです。
これで黒字が実現できますので、計画前提としては
「同じ能力を持って同じ給料で2人体制でサービス提供をする」
ということが追加されます。
経費(固定費)の特徴は、取引があろうがなかろうが費用がかかる、ということです。
そしてその費用は、取引を通じて得られる粗利の合計によって賄われます。
売上が小さいことが想定される事業開始初期では
できるだけこの経費(固定費)を小さくすることが望ましいですね。
ただ今後事業を大きくするための投資は大切ですね。
物販だったら数が増えた時に対応できるよう、
受注から配送までを自動化するシステムとか。
無形サービスであれば認知度をあげるための広告費用や、情報収集するための活動など。
そういう投資を考えると1年目、2年目といった最初の年は赤字になることがよくあります。
長い目でみて5年後、10年後に累積で黒字になり成長し続けるのであれば、
最初赤字でも意味があります。
赤字になって困るのは資金です。
「腹が減っては戦はできぬ」と同じで「資金がなければ事業はできぬ」です。
それがC/F(キャッシュフロー)になります。
次回はこのC/F(キャッシュフロー)についてお話します。