Columns|コラム【論語と私】全11回
第10回 不患人之不己知 患己不知人也
子曰 不患人之不己知 患己不知人也
人の己(おのれ)を知らざること患(うれ)えず
己の人を知らざることを患う
人が自分のことを知ってくれないことを気にするのではなく
自分が他人のことをちゃんと理解し見抜けているかを気にすること
自分を理解してほしいなら、まず自分がその相手のことを理解するよう
努力すべきである
これは私が自戒を込めて、大事にしている感覚の一つです。
今から思えば結婚生活始めプライベートな付き合いは失敗続きでした。
その原因はここにあると思っています。
「相手に自分を理解してもらうことや受け入れてくれることを求めすぎた」こと。
その前に相手のことを理解すべきだった、と
後悔先に立たず・・・
「なんでわかってくれないんだろう」
「言わなくてもわからないかな」
「私はとても困るんだ」
「だって仕方がないだろう」
こんなセリフを数え切れないくらい使ってきた気がします。
英語にすれば I (動詞) 〜〜 と主語がすべて「I」
すなわち「私」でした。
自分の不満が出てくるときは、
少なからず自分は不機嫌で感情的になっています。
するとそれが邪魔になってこれから入ってくる情報にフィルターがかかってしまい、
本質を見落としてした恐れがあります。
すると問題解決は遠ざかりますし、
相手との信頼関係醸成も遠のいてかもしれません。
もちろん自分を伝えることも大切です。
でもその前に、なぜ相手がそういうことを言ったのか、
なぜ相手はそういう行動をとったのか、
その背景を知ることが、問題解決に大切なことだと気がついたのは
そう遠くない過去でした。
Why did you say ~? (なぜあなたは〜を言ったのか)
What did make you do ~ ? (なぜあなたは〜をしたのか)
会話の主語が「あなた(you)」になることで、
相手が抱えている問題解決が今の議題であることが明らかになります。
また自分も冷静になれます。
会社員時代になかなか話がかみ合わない同僚がいました。
そのときにふと「なにが私の言い分に対してこの人が理解できなくしているのか」
と思ったのです。きっと理由があるはずだと。
できるだけ冷静になって、できるだけ事実と見つめてみました。
同僚がよく口にしていたのは
「あなたにはわからないはずだ」
「あなたの言っていることがわからない」
「なぜ今そういうことをしなければならないのか」
だったのですが、その人には必ず対案がありました。
もしかしたら、その人にはいろいろ見えていることなのに、
無知な私が出している指示が脈略ないように見えるのでは、
と仮説をたててみたのです。
あるときその同僚と話しました。
「たぶんあなたより私の方が知っていることがあるはずだ」
同僚がそういってくれたことで私は合点がいきました。
仮説は正しそうです。
すなわち私がこの人の良い面を引き出せていなかったことになります。
それからというものの、まず先に相談することにしました。
その同僚はとても親切にたくさんのことを教えてくれました。
同時に私からの提案にも耳を傾けてくれるようになったのです。
それ以来その同僚は私にとってなくてはならないパートナーになりました。
40数年自分本位で行動してきた自戒を込めて、
真摯にこれからも対応していきたいと思います。
出展:イースト・プレス まんがで読破「論語」